Introduction: 名士の図書館VR – 仮想技術で再現する名士たちの蔵書コレクションアーカイブ –

特定非営利活動法人 地域資料デジタル化研究会
理事長 小林是綱

はじめに

 大学をご退官された多くの研究者たちの蔵書が捨てられています。生涯をかけた研究とその研究を支えたたくさんの文献が捨てられています。一冊一冊は国立国会図書館をはじめ公共図書館にあるかもしれませんが、その[蔵書コレクション]に価値があると考えています。NPO法人地域資料デジタル化研究会では、山梨県北杜市立高根清里小学校の跡地を活用して、そうした名士たちの捨てられてしまうコレクションの一部でも収蔵できるよう「名士の図書館」づくりに取り組んでいます。しかしながら収蔵スペースの問題や預託者負担による経費などから、貴重なコレクションのごく一部しか預かることしかできないのが現状です。そこで最新の仮想空間=VR技術などを含めたICT技術を用いて、その蔵書コレクションをまるごとデジタル化し、VR体験できる名士の図書館『名士の図書館VR』の構築に取り組みたいと考えています。

事業概要

最新の仮想現実=VR技術を用いて、名士たちの書斎あるいは研究室をデジタル技術で記録し、
ウェブサイトあるいはVRゴーグル等を用いて共有できる事業を構築します。

  • 360度パノラマ写真によって名士の書斎あるいは研究室をまるごと記録(撮影)
  • 高精細写真によって名士の書棚等をまるごと記録(撮影)
  • 高精細画像から蔵書目録を作成(手作業)
  • 名士の映像、写真などもデジタル化
  • 上記の素材をもとに名士の図書館VRのウェブサイトを構築
  • 上記の素材をもとにVRゴーグル用コンテンツを作成
  • 公開可能なものはウェブサイトにて公開。VRゴーグルを用いて視聴体験できるコンテンツは

八ヶ岳コモンズ(旧北杜市立高根清里小学校)にて視聴。

期待される成果・効果および将来計画

 名士の図書館VRは、仮想現実=VR技術を用いることで名士たちの知の空間(書斎や研究室など)を多くの人々と共有することができるようになります。距離や時間を超えて、その名士たちの蔵書コレクションを体感し、その知の過程、知のルーツを研究論文としての成果物ではなく、そこに至る過程なども含めて、蔵書コレクションからたどることができるようになります。

 名士の図書館VRにおいて、その名士たちの蔵書コレクションから電子書籍への入り口になることをイメージしています。その教授の本棚にある本。本と本との並び/組み合わせ=コンパニオンブックスにより新しい読書の需要を喚起することができると考えています。

 将来計画として、ひとつは[名士]の広がりと[技術の進化]を考えています。名士の図書館VRにおける2020年度の対象者は、大学教授などの研究者が主としています。しかし、そこで終わるものではありません。今後の広がりの中で、小説家/絵本作家/映像や美術や音楽などクリエイティブな方々の創造の現場、起業家/政治家/地域の名士などにも広げていくことができるものと考えています。さらに技術の進化として360度パノラマ写真からAIを用いた3DCG(3次元コ
ンピュータグラフィックス)で再現し、実際にその書斎や研究室、創作の現場に居るような臨場感のある名士の図書館VRを構築できる技術が生まれると考えています。そのためにもいま消えて失われてしまう場所や蔵書たちを記録することが何よりも大切なのです。名士の図書館VRによる記録が後世において3DCG空間として再現でき、将来その名士たちに興味関心をもった人たちが訪れることができる。そんな将来を目指しています。

 名士の図書館VRで書斎を丸ごと残す名士たちが、数十人から数百人、数千人と増えたときまさにそこに『名士たちが知を生み出した空間を集めたライブラリー=図書館』がVRとして再現できるのです。私たちNPO法人地域資料デジタル化研究会は、その一歩を踏み出そうと考えています。

※ 今回の助成申請事業においては、名士たちの本棚の高精細画像から蔵書目録を作成する作業を手作業としました。ただし今後、AIを用いた画像認識技術などにより書棚の高精細画像から自動的に蔵書目録(ブックリスト)を作成できる技術にも強い関心を持っています。機械学習のもととなる書影(表紙、裏表紙、背表紙)などの画像を学習させ、書棚の写真から蔵書目録を自動生成する技術も、そう多くない将来誕生するものと考えております。

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